0と1


弧を描きながら 空高く飛び行く

全てを連れ去り 全てを打ち壊し


無限にループしているような錯覚に襲われつつ

走り続ける私の姿を見ていた唯一絶対の審判者

時限発火装置のタイマーが頭の中で鳴り響いて

狂う 狂う 狂う


全て消したくて 君を忘れたくて

私の記憶の全て 0で埋めたくて


ようやく辿り着いたんだと息を切らせつつ呟く

その競争に勝った代償が私を消去するウイルス

ああこれでいいさその代償は甘んじて受けよう

壊す 壊す 壊す


最後の審判の日 私の最後の審判

地獄の業火さえ 甘美なる思い出


君と共有した沢山の記憶・体験・感情・時間も

全てこの瞬間に洗い流されてしまうのだろうね

もう私は何も要らないしもう何も必要としない

拒む 拒む 拒む


業火は放たれた 全て火に飲まれ

有機物は炭素へ 無機物は流体へ


その刹那に飛び散った火花が連鎖反応のように

0と1のウイルスに飛び火してそして破裂する

所詮全記憶消去は叶わなかった事に気づいた時

叫ぶ 叫ぶ 叫ぶ


その瞬間人類は 神をも超えたと

そう信じ切って 堕落に身を任す


所詮私一人の問題である事に気付いた時は既に

あの古き良き世界はもう二度と戻らなくなって

君との切ない思い出への追憶が唯一の生命の糧

沈む 沈む 沈む


避けられぬ運命 伝え切れぬ言葉

怒り切れぬ悲劇 逃げ切れぬ現実


0に満たされた果て無き虚空の中心で一人佇む

私の心を侵すものが何一つ無くなった事を知り

この仮想空間の中心で私の精神は空中分解した

咽ぶ 咽ぶ 咽ぶ